次のメシのタネ

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次のメシのタネ

先日、地下鉄に乗っていたら、とある弁護士事務所の広告が目に入りました。
「あなたはサービス残業していませんか?」
どうやら、未払残業代に関する業務請負の広告のようです。

これまでは金利過払請求が大流行で、電車の広告も消費者金融を過払請求が上回っていたくらいですが、アイフルが事業再生ADRとなったことからも分かるように、もうすぐ下火になるでしょう。

そこで、この手の業務をメインとしていた弁護士業界としては、次のメシのタネを探す必要があります。
その意味で、目の付け所としては、すごいと思います。リスクが低く、勝率が高い分野ですので。
気になったのは、マクロ的にはどうなのか、ということです。

もちろん、残業をした場合に割増賃金をもらうのは労働者としての権利ですから、残業代の請求は堂々と主張して良いと思います。
また、サービス残業を強要している企業があるのであれば、訴訟行為を通じてこれが是正されるのは、社会的に良いことだとも思います。
つまり、ミクロの視点からは、正しい行為なんだと思います。

ただ、マクロ的に眺めると、風景が変わってきます。
この手の訴訟が社会的に広がり、全産業に波及してしまった場合、労働コストの低い海外へ逃避する企業が増加して、長い目で見た場合に労働者にとって不利益になる可能性があるのではないかという懸念が生じます。
もちろん、先に述べたように、不当に抑圧されている労働者を救済する目的で、この手の請求が行われるのであれば、社会的な不公正をただす意味で重要なものだと思います。
ただし、過度な請求、ヒステリックな請求につながらない限りは・・・・・。

では、現状はどうでしょうか。残念ながら、やはり多数の人間が業界に参入することで競争が生じ、結果として過度な請求等はどうしても生じてしまうと思います。
金利過払請求について、最近は弁護士事務所がTVCMを打ってアピールをしたりして、過度に問題を煽っているようにみえるのは私だけでしょうか。同じ問題が未払残業代でも起こり、必要以上の請求が各企業に提起された場合、産業界に与える影響は、金利過払請求の比ではありません。なにせ、貸金業という一業界にとどまらず、日本の全産業に影響を与えるものだからです。

その辺りのバランス感覚、誰が取っていくのかは分かりませんが(裁判所の判例になるのでしょうか?)、かなり大きな問題になる要素をはらんでいるだけに、注意深く見守っていきたいと思います。

あと、産業構造も変わってますよね。
これまでの労働集約型の業界から、知識集約型の業界が主体に。
労働時間と成果の間の相関関係が、これまでより低くなっているはずです。
「○○時間働いたんだから、○○円もらう権利がある」とは、必ずしも言い切れなくなってますよね。
その辺りも考慮して、昔の判例の延長線上で判断されなければいいな、と思います。

我々IPOに関わる人間も、過去数度のベンチャーブームなど、上場企業としてのレベルに達していない企業を、市場に送り出してきた経緯がありました。ですから、人のことは言えないのですが・・・。
ベンチャーブームについても、多数の人間が業界に参入することで、「他に負けないために」徐々にハードルが下がってしまったことが大きな原因です。競争といえば聞こえはいいですが、モラルを無視した競争は、単なるバブルにすぎません。
業界にいる人間として、業界全体のバランス感覚とか、他の分野へ与える影響とか、その辺りも考慮できるようになっていかなければいけませんね。
同じことが、残業代問題でも考慮されることを望みます。

<よろしければ弊社HPもご覧下さい>
http://aassist.weblike.jp//

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