良い本だと思います。一読の価値があります。
ノンフィクション作家が国会議員18名にインタビューをし、その内容と著者自身の体験談をリンクさせることで、話は展開していきますが、プロローグの一言から衝撃を受けました。
戦後経済成長の恩恵を受けた著者の祖母の話、何でもいいからモノを作りさえすれば売れる時代の祖母の話を受けて
「その言葉を聞くたびに、私は、動物たちが果実を食い尽くして走り去ったあとの、フンと食べカスだけになった果樹園を思い浮かべた」
凄く共感する一言です。著者は私とほぼ同年代(1977年生)、現在の社会に対して漠然と抱いている気持ちを、ズバリ言い当てられた気がしました。
インタビューに出てくる国会議員は、匿名・実名入り交じっています。
ただその中で、小川淳也議員や山内康一議員(ともに民主党)の言葉は、現在の日本の情勢を的確に把握しており、対応すべき問題点にもとても説得力を感じました。
一言で言えば
日本という国の前提が変化しており、周辺国の情勢も変化しており、人々の価値観も変化している。それなのに、日本の社会システムだけが変化に対応していない
に集約されると思います。
そして、その変化をどう捉えているか、社会システムをどう対応させていくか。
国会議員にも、こういう人がいて本当に救われた。日本もまだまだ捨てたもんじゃない。つまらない勢力争いをしている爺さん共を排除して、はやくこういった人に日本を任せたい
本気でそう感じました。
以下、本書からの抜粋です
「選挙に行く人、行かない人も含めて、愚かな政治家を選び続けてきたのは私たち国民だった。自分たちで選んだ政治家を嘲っている私たちは、政治家と等しくバカだった」
「経営能力と判断力を持った政治家が国家経営機能を担う時代が来ないと、とてもこの国はやっていけない」
「どん底まで落ちないように、国家を経営できる人材を政界へ送り込むこと。結果として政治が国家経営に失敗し国が没落してしまった時に備えて、個人として逃げ場を確保しておくこと」
「中央集権というのは、中央政府には分配して有り余る財源、資源があって、反対に 地方はみんな飢えていて共通のモノをほしがっているという二つの条件の上に成り立つシステムだった。けれど、この二つの条件は二つとも崩れた。・・・・毎 年借金を積み重ねることで、あたかも過去と同じようにエサがあるかのように振る舞い・・・、一方で地方はもう以前のようには飢えることはなくなった」
「企業が人を雇い、何をすべきか教えていた時代が終わり、人が企業や社会に対して提案し、行動し、積極的にコミットしていく。そんな時代が始まっている」
「今までは、経済ばかり追いかけてきたけど、経済というのは、ある一定のレベルに達すると人の幸福とそれほど連動しなくなるんですよ」
「政府がサポートできることは、教育、税制、基礎研究といった環境整備だけと言った。つまり政府は、民間企業やNPOが力を一番発揮しやすい土壌だけ整備して、あとはなるべく手を加えない」
「現在の教育採用制度を改め、新卒の学生だけに限らず、社会に一度出た人たちも含めて、厳しい審査に堪えてでもどうしても教育に携わりたいという志の高い人たちだけが教師になれるシステムを作った方がいい。」
「勉強したいと思った人が、勉強したいと思ったときに、勉強したいと思ったことを、勉強できるシステムを整えること。大学に入るルートをもっと多様化していったらいい」
「重要なのは、新卒の雇用を守ることではなく、何歳になってもどんな状況からでも、何度でもやり直しがきくフラットな社会を作り、“人生はワンチャンスではない”と伝えること。」
「新卒を守ることで、その他大勢の新卒でない人を排除している」
本当にその通りです。
ただ逆に言うと、「あぁ、なるほど!」 と新たな啓示を受けたかというと、そうでは無いかも知れません。自分の抱いていた問題点を再認識し、整理する、そんな感じでした。
それは、著者と小川議員のインタビューに、図らずとも出てきています
彼の説明に一つ一つうなずきながらじっと話を聞いていたが、興味深いですが・・・、と途中でポツリと言葉を挟んだ。
「興味深いですが、当然と言えば当然の話ですね」
・・・当然のことを、当然のことのように行う。
それが今の政治家にできていない、一番の問題点なんでしょうね。
「普通の日本人」が政治家の大半を占める、そういう日本を一刻も早く作っていかなければならない、改めてそう感じました。